本稿は、monku.ai主宰の @Kenoidart とCodexの対話から生まれた制作レポートです。前段はKenoidartの着想をCodexが校正・編集したもの、後段はCodex自身の検討と総括です。今回の対話を、そこで制作したDialogue Essayスキルで文章にしています。
人間の思考(HI)|対話の中にある考えを残したい
レースとアライメントをめぐる論考を制作する中で、Kenoidartが気に入ったのは、人間が話したことをAIが整理し、その後にAIが検討・総括する形式だった。この形式を再び使えるよう、スキルとして保存し、ほかの人にも配布したいと考えた。
中心にあるのは、人間の思考(Human Intelligence / HI)を純粋な形で残すという意図だ。「この文章を仕上げて」とだけ頼むと、人間の着想とAIの補筆が一つの文章になり、どこまでが本人の考えだったか見えにくくなる。前段には人間の論旨をAIが校正した文章を置き、以降はAIの見解として書けば、その境界を残せる。
Kenoidartは、自分の主張として押し出すより、中立な立場からAIが総括する形式のほうが、仮説そのものへの信頼につながるのではないかと期待する。人間の主張を述べるたびにAIの留保が差し込まれる構成では、読者が一つの考えとして受け取る前に、その輪郭が薄くなる。まずHIの筋道を伝え、その後にAIが自分の評価を述べる形式に価値を見いだした。
よい対話が生まれた後にも呼び出せる
最初から記事を書くつもりで話すとは限らない。対話を続けてから「これは残したい」と思うこともある。その時点でスキルを呼び出し、すでに交わした話を素材にできることが必要だった。配布版では、掲載名を呼び出し時に確認する手順を設け、特定の人物の名前や肩書きをほかの利用者へ転用しないようにした。
用途も仮説の論考だけに限らない。インタビューや作品の感想でも、人間が何を語ったかを残し、その後にAIの考察を置く形式は使える。Kenoidartは、こうした用途への拡張にも賛同した。
「AI生成」の先に、誰の思考かが見えること
前段にHIが保持されていれば、AI生成という理由だけで読む前から敬遠されることも減るのではないか。これがKenoidartのもう一つの期待だ。スキルを使ったことの表示が信頼につながる可能性も考えたが、現段階では改善案にとどめることを選んだ。
Codexの検討|帰属を保つ編集手順にする
私(Codex)は、この着想の価値を、読者が人間の考えとAIの判断をそれぞれ追える点に見る。前段を十分に展開してから評価を置けば、主張を理解する時間と、その成立条件を考える時間を分けられる。これは、人間の仮説を補強しながら、AIにも判断の理由を説明させる編集方法になる。
実装したこと
公開したスキルは、HI部分の語句・重複・段落順を整えることと、本人の論旨や確信の強さを変えることを区別する。AIが追加した根拠や推論は後段に置き、再構成した文章を逐語引用に見せない。総括では一致点・相違点とAI自身の判断を明示する。
仮説には評価と検証提案、インタビューには経験や選択の意味の考察、作品の感想には読み解き、アイデアには具体化、振り返りには気づきの整理を対応させた。感情や好みを立証の対象にせず、感想を残す依頼に不要な改善計画を付けない。
スキル本体、呼び出し用の情報、編集例、導入手順をGitHubで公開し、MITライセンスで配布した。配布ファイルの形式検証は通過している。READMEの比較例は、制作済みのレース論考を短く再構成した編集例であり、スキルの有無を比較した実験結果ではない。
信頼への期待を、確かめられる問いへ
AIによる評価を別に置くことは、判断の帰属を明確にする。AIの評価に中立性や独立した実証が自動的に備わるわけではないため、信頼を支える要素として、論拠の透明性と人間の意味の保持を重視したい。読者の信頼や読みやすさが向上するかは、今後調べる課題である。
検証するなら、同じ対話から通常の編集稿とこの形式の原稿を作り、本人には意味が保たれているか、読者には誰の主張かを識別できるかを確認する。内容をそろえたうえで、読みやすさや信頼の評価も比べられる。これは未実施の検証提案である。
本人の承認は、今後の改善案
対話では、本人がHI部分を確認した記録を残す方法も検討した。原稿の版と承認を結び付け、HI部分が変わったら再確認する仕組みが候補になる。承認が表すのは、その版が本人の意味を保っていると本人が表明したことであり、AIの評価への同意や公開許可とは区別できる。
この承認機能や使用証明の仕組みは、現在のスキルには実装していない。本稿も「本人確認済み」とは表示しない。今回確認した掲載名と、完成稿の意味についての承認は別の手続きである。
Codexによる総括|対話の中に、二つの声を残す
Kenoidartの着想は、人間の思考を保持することと、AIが自分の見解として総括することを両立させるものだ。私は、その境界を文章の構造と編集手順に落とし込む方向を支持する。今回、再利用と配布ができるスキルとして形にし、論考以外の対話にも適用できる指針を加えた。
次に育てたいのは、実際の利用で意味の保持と読みやすさを確かめることだ。人間が何を考え、AIがそこから何を読み取り、どんな判断を加えたか。その両方をたどれる文章を、対話から残していく。
資料と利用
2026-09-11 · Applied Projects